MAKIT(マキット)始動。
- 広報担当いしど
- 4月1日
- 読了時間: 10分

2025年4月、チハヤ会に就労継続支援B型事業所が加わった。事業所名はMAKIT(マキット)。林福連携をベースに活動するMAKITについて、チハヤ会統括施設長 石戸 悦史、おむすび堂・MAKIT管理者 福本 昌彦、MAKITサービス管理責任者 坂村 佳希の3名に話を聞いた。
-MAKITってどんな活動をするところですか?MAKITを知らない方にどういう場所なのかお聞かせください。
福本(以下、福)メンバーさんと薪作りをする場所です。
-メンバーさんと言うのは、福祉サービスを受けている利用者さんのことですね。
福本)そうですね。
石戸(以下、石) 事業の大半を占めるのが木の駅プロジェクト。木の駅は林地残材を買い取って薪に加工する拠点になるから、今まで県外に出てしまっていた森林資材を地域の中で循環させることによって、みどり市の5つのゼロ宣言の脱酸素(温室効果ガス排出ゼロ)っていうところにも絡んでいく。そういう狙いを持った市の事業とMAKITと言う1福祉事業所が「林福連携」という形で進んでいく。みどり市に来年度オープンする温泉施設にその薪を納めていくことも決定していて、安定収益っていうわけじゃないけど、MAKITを運営していく上ではすごくいいなと思う。最終的に薪やみどり市の木が子どもの応援につながっていくっていうのが新しいし、メンバーさんだって大人なので、地域全体で子どもを育てていくっていう中に彼ら(メンバーさん)も入っていく、そこが本当に素晴らしいなと思っている、そういう仕組み、システムを作っていける、そこに入れるっていうのがいいなと思う。
-地域全体で子どもを育てていく仕組みはもう出来ているのでしょうか?それともこれから作っていくものですか?
石・福)これからですね。
石)もうある程度はできているけど。
福)地域の子ども支援をするおむすび堂を3年前に始めて、その持続を目指す中で、どうしてもおむすび堂単体で「稼いで、子ども支援をして」っていうのが難しい。じゃあ、どうしたら自立できるかな?と考えていたところ、林福連携で5年前から協働して繋がりが太く強くなっていたみどり市が主体の「木の駅」、「地域内エコシステム」っていう構想の中に混ぜていただいた。具体的には、木の駅に林福連携でメンバーさんが関われる、そこでしっかり稼いで工賃も水準以上を目指していく、残りの収益の一部は子ども支援につなげていけると考えている。その一連の流れを【おむすびWORKS】として、その枠組みの中で「稼ぐ」MAKITがあって、「子ども支援をする」おむすび堂があって、「里山整備をする」おむすびエコ隊と言うボランティア団体があって、その全部が繋がっていて、相乗効果で地域が幸せになるんじゃないかなっていうもの。
-5年前に林福連携を始めた時にはMAKITやおむすびWORKSのような構想っていうのは無かったんですよね?もともとはどうして林福って話になったんでしょうか?
石)もともとは福祉楽団のセミナーを聞いて、自伐型林業というものを知った。大きな林業ではない、車一台で山に入って行って、木を切り出してっていう自伐の林業。従来の「林業」って山をはげ山にしていくことの危険さがある。大きな重機を山に入れていくので必要な木を切って大きな道を作って山の中に入って行って大きく切り出していくからそうなるんだけど、自伐型林業は小さな道、軽トラ1台通れる、2tトラック1台通れる2.5M幅の道を作りつつ木を運びだしてくるから山は崩れない。むしろ山の木を育てていって、もっと上質な良い木が作れるしそういう風に山に入っていく事によって山も成長していくって話だったのね。200年先の山のことを考えて自伐型林業で山を育てていくっていう話を聞いて、実際に福祉楽団でやっているという事実を知って、そういうのいいよねと。みどり市の面積の8割は森林な訳で、そしてみどり市の木が県外に出ていってしまうっていう課題も実際あって、うまくリンクしていた。
-福祉楽団さんの話をきいてチハヤ会からみどり市にアプローチしたっていう事ですか?
石)違います、それを聞いていたのもあったけど、Iさん(みどり市職員のキーパーソン)て人がいて、チハヤ会が森林組合に木をもらえませんかとアプローチしていると聞きつけて「面白い取り組みをしているところがあるよ」と言うことでそのIさんが薪ボイラー、薪ストーブの補助金の話をチハヤに持ってきたことが始まり。
福)それが5年前ですよね。森林組合に木材の話を持って行ったのは木工アートに取り組もうと思ったからなので、そもそもはアートが始まり。
石)ただ、その福祉楽団の話を知らなければ全然話は見えなかったし、福祉でやってるってことも知らなかったわけだから。それからみどり市の林業が抱える課題や里山整備の補助金の話も聞いて、天神山(チハヤ会から車で2-3分の里山)の整備を始めた。
-里山整備を始めたころには、みどり市もバイオマスエコシステムとか木の駅事業っていう話がもう上がってたんでしょうか?
福)構想はあった気がするが、具体的に動きだしたのは3年前くらい。
石)キーパーソン(Iさん)が林野庁に戻ってしまうタイミングで具体的に進んでいったような気がする。
-そういう経緯があって今回MAKITを開所する事になったんですね。やっぱり就労Bなので支援員とかサビ管とか必要だと思うんですけど、そこで坂村さんがサビ管に抜擢されたのはなぜですか?
福)もともと就労Bのサビ管の経験があるっていうのも聞いていたし、アウトドアや農業もそうだけど、モノづくりのノウハウが凄いっていうのも聞いていた。昨年4月に立ち上げたCSS(チハヤソーシャルセクター)と言う活動にお声がけをして入ってもらって、その活動の中で坂村さんが適任じゃないかなと思っていた。
-坂村さんはサビ管やりませんか?と言われた時にどう思いましたか?
坂村(以下、坂)そうですね、まったく新しい分野ではあるので、新しい事にチャレンジできるってところが楽しみだなっていう部分もありますし、ほんとに新規から始めるってところなので可能性としては無限。その可能性を生かすも殺すも自分たち次第だなってところですね。緊張と楽しみと、いろんな気持ちの中で受けさせていただきました。
福)ほんとサビ管を決めたのも直前ですからね、11月位。事業所の形態は就労BなのかAなのか、既存の通所(チアフル)の中に作ろうか、とかいろいろな選択肢があった。正式にサビ管さんお願いって決まったのは1月位。
-2024年末からバタバタと新事業所に向けて動き出した、という感じですね。みどり市と連携して事業所経営をすると聞いていますが、具体的にはどういう契約を結ぶのでしょうか?
福)木の駅事業の運営委託の受託ですね。2月3月は準備期間。4月から本格稼働。
-本格稼働して、MAKITとしてまず1年間でやっていきたいこと、やらなければならない事とかはありますか?
福)まず、優先順位から言うと、木の駅を軌道に乗せること。年間生産量200tていう数字が出ているので、それを最優先で取り組んでいきます。みどり市の温泉施設ができるのは1年後の令和8年度になる、だからひたすら薪をつくって乾燥させる、収入は正直無い。薪の販売での収益は得られないっていうデメリットもある。その分委託費で何とかやっていく、あとは温泉施設に卸すものに加えて、一般販売用(キャンプ、飲食店、薪ストーブ用)なども少し遅れて作り始めてもいいかなと思っている。木の駅、一般向け用の薪作りを軌道に乗せる。それから平行して、カフェ事業、アート事業もやっていきます。メンバーさんの特性に合わせてグループ分けして取り組んでいく。最初はその3つかな。カフェはベースに茶屋おむすび堂があるから、それを就労の方に切り替えてやっていく予定。アート事業は、いままでチハヤ全体でやってきたアート作品をどう活かすか、展示先を探したり、グッズの販売だったり、コラボ先を探したりとか、そういう事をやっていけるといいなと思っています。
石)そこはNODD(デザイナー)さんなどを筆頭に「形にしていく事」が大事なのかなと思っている。そういうサイクルみたいなものが出来ていくと良いなと思う。そうすると、あ、こういう活動をするとこういう商品になって行くんだ、こういう見せ方が出来るんだって言うことがわかって行くと、現場の方もこういう活動をもっとやって行こうか、とかこういう事やりたいよねというようにスタッフの意識も変わってくるんじゃないかと思う。素材に触れて生み出されていく、生み出していくってすごく難しいので、そこをMAKITがやってくれるっていうのが見えてくると、メンバーさんの輝きが増していく、それがこどもの応援につながっていくってなってくると、自分たちが仕事をやっていく意義みたいなものとか、障害福祉やっててよかったとか、今後絶対それが必要になると思うし、ただ支援しているだけでは多分この仕事をやりたいと思わなくなっていくんじゃないかなと思う。
福)1年目は地に足をつけてやっていく、2年目3年目は今ある商品のブラッシュアップと言うか、コーヒーだったら豆の焙煎なども視野に入れてやっていきたい。みどり市の害獣問題の解決策としてシカシカカレーを販売しているが、鹿革なども活用していけたらなども考えている。他にもいくつかお話を頂いているので今後取り組んでいけたら。
-では今後は薪事業だけじゃなく、いろんな事にチャレンジしていく予定なんですね?
福)そうですね、そこは間違いなく、やっぱり1つの事業で、木の駅やめますって市の方が判断した場合、我々ではどうにもできないところもある。まずは木の駅事業に全力を注ぐけど、やっぱり倒れないように2本脚3本脚で立つ、っていうのを念頭にいれつつ、いろんな事業にチャレンジしていかなくてはならないと思う。そういう意味でも一般的な販路をMAKITで開拓していくことが大事ですかね。
-いろんな意味で自立していくってことですね。
では最後に、立ち上げにかかわった3人に、これからMAKITで「絶対これをする」っていうものを約束として挙げられるものがあれば1つだけお願いします。
福)MAKITを全国区にする。いろんな意味で。工賃もそうだし、活動内容も意義もそうだし、なんか群馬にMAKITっていうところがあって、なんか林福ですげえみてえよ?って見てもらえるような事業所にしたいです。
坂)地域、みどり市の課題の部分、木が外に出てってしまう、鹿の処理に苦慮していることなど、地域の課題に取り組んでいって、最終的には地域の方々に「ありがとう」をいっぱいいただけるような事業所として、皆さんもそのありがとうで笑顔になって活動の幅を広げていけるような事業所になっていければと思います。
石)MAKITでというか、チハヤ会でということになると思うんですけど、200tは絶対に作らないといけない、それは一つ目標になっている、ただその200t作ったからどうこうじゃなくて200tつくった事によってそれだけの笑顔と感謝が溢れる町づくりを、やっぱり経営ヴィジョンにのっとってやっていく。で、基本は応援しないと応援されないので、多くの応援を得るためには多く応援しなければならないと思っている。だからまず自分たちは、薪作りやこのMAKITを通じてたくさん応援していく、チハヤ会としていろんなものを応援していって、たくさん応援を集めて基本理念である【共生社会実現】を達成していきたい。

チハヤ会での新事業所立ち上げは、おむすび堂を除くと約10年振りになります。10年前の就労継続支援B型と今とでは大きく介護サービスの内容は変わり、事業者にとっては厳しい状況だと思っています。そんな中で、新しい分野に飛び込み地域貢献を軸に活動していく「MAKIT(マキット)」に、私たちは期待せずにはいられません。
MAKITには「薪人」という意味の他に「Make It=成し遂げる」の意味が込められています。数年後、MAKITがこの状況をどう切り開き何を成し遂げているか、どうか一緒に見届けてください。